虚血性腸炎とは
虚血性腸炎とは、血管攣縮(れんしゅく)といって腸の血管が一瞬だけぎゅっと収縮することにより、大腸の左下半分だけが一過性に血液の流れが悪くなり、腸が傷んでしまう病気です。
突然、左下腹部痛が出現した後に血便が数回出現するというエピソードが典型的な発症の仕方で、多くの場合は数日から長くても1週間程度で症状は消失します。
非常に遭遇頻度が高い疾患の一つですが、予後は良好で、何も治療をしなくても自然に回復して治癒します。
エピソードを聞いただけでも診断可能ですが、症状に血便を伴っているため、念のため大腸がんを除外する目的で大腸カメラ検査を行うことが多いです。
虚血性腸炎の原因
原因は不明です。特に病気のリスクや予防法はありません。
虚血性腸炎の症状
- 間欠的な左下腹部痛
- 下痢
- 血便(下血) など
検査と診断
症状の典型的なエピソードを伺えば、問診のみでも診断は可能です。ただし食中毒が否定できない場合は便培養検査を行い、念のため抗生物質の内服を行うこともあります。
診断を確定するためには大腸カメラ検査を行う必要がありますが、発症直後の腹痛がある状態で内視鏡を挿入すると患者さんの負担が大きいので、後日、症状がおさまりつつある時点で、他の大腸の病気が隠れているかどうかを念のため確認する目的に大腸カメラ検査を行うことが多いです。なお、症状がある時に大腸カメラ検査を行った場合は、大腸表面の粘膜が赤くただれたり、傷(潰瘍と言います)ができていて、傷から血がにじんでいたりする所見が確認できます。
虚血性腸炎の治療
基本的には無治療で自然回復します。おなかの痛みが強い場合は痛み止めの頓服薬を服用し対処します。下痢止めや血便を止める治療はありませんが、概ね2-3日で自然におさまります。痛みが強くてつらくなければ、飲食は普段通りとって頂いて結構です。概ね数日から1週間前後で症状は完全に消失します。大腸の傷がひどい場合は傷の完全な回復までには1か月程度かかることもありますが、仮に傷が残っていても自覚症状がなければ、普段通りの食事(刺激の強い食品や暴飲暴食はだめですが)と生活を送ることは可能です。