大腸ポリープとは
大腸ポリープとは、大腸粘膜の一部が盛り上がったり凹んだりしてできた腫瘍のことです。大腸ポリープの種類は様々ですが、大腸腺腫(せんしゅ)という良性腫瘍がほとんどであり、検査中にその場で内視鏡切除手術が可能です。
大腸腺腫は次第に大きくなったり、形がいびつに変形したりすると、がん化するため、進行大腸がんの元をたどると大腸腺腫であることが多いと考えられています。ただし、大腸腺腫からがん化しても、初期の段階を早期大腸がんと呼び、大腸カメラ検査中に内視鏡切除手術が可能です(実際には、がんの大きさや形状によって治療可能な条件があります)。
大腸ポリープや大腸がんの原因
大腸ポリープの原因は不明ですが、一般的に40歳を超えるとできやすくなります。大腸がんの原因についても不明であり、食生活の欧米化などが指摘されていますが、実際の原因は一つではなく、環境因子や遺伝性要素など様々な原因が複雑に関与して生じるものと推定されています。一般的に大腸がんのほとんどは大腸ポリープががん化することにより生じます。
なお、特殊なケースとして、10歳代の若い時から大腸ポリープができ、年齢とともにポリープが増え、大腸内に100個以上のポリープが発生する家族性大腸腺腫症という病気があります。50%の確率で遺伝すると言われており、当院でこの病気が疑われた場合は遺伝性腫瘍の専門家へご紹介しています。
大腸がんになりやすいとされている人(リスク因子)は、40歳以上、大腸ポリープができたことがある人、大腸がんの家族歴がある、糖尿病がある、喫煙歴がある、肥満や運動習慣がない場合です。特に強調しておきたい点は、40歳を過ぎたら、大腸ポリープや大腸がんになりやすくなるということです。
従って40歳を過ぎて、特に上記に該当する方は、早期発見・早期治療のためにも大腸カメラ検査を定期的に受けていただくことをお勧めします。
大腸ポリープや大腸がんの症状
大腸ポリープや早期大腸がんは自覚症状がほとんど現れないことが多いです。大腸ポリープが肛門に近いS状結腸や直腸にできた場合は、血便がきっかけとなり、検査で発見されることは比較的よくみられます。しかし実際にこれまでの私の経験上、大腸ポリープや大腸がんの多くは無症状の段階で発見しており、前提として自覚症状はあてにならないということも非常に重要な点かと思われます。したがって、大腸ポリープや大腸がんができやすいリスク因子をお持ちの方は、たとえ無症状であっても大腸カメラ検査を受けた方がよい場合もあります(ただし無症状の場合は自費診療となります)。進行がんになると、大腸閉塞による突然の嘔吐や腹痛、腹部膨満感が出現したり、貧血や体重減少など様々な症状が出現する頻度が増えますが、発見時は無症状のこともあります。
大腸ポリープや大腸がんの検査・診断方法
大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)が第一選択です。大腸カメラ検査では、大腸内の粘膜の色や凹凸の変化を直接見て大腸ポリープを発見することができます。当院では丁寧に調べ上げることで、小さな大腸ポリープでも見逃すことなく発見することに努め、見つけ次第、その場で内視鏡切除手術を行っています。
大腸カメラは大腸ポリープの
発見かつ治療が可能な唯一の手段
大腸カメラ検査以外では、CTコロノグラフィーや大腸カプセル、注腸造影検査などの検査方法もありますが、その場で正確な診断が下せないこと、小さな病変や凹凸のない病変は見逃されてしまう危険性があること、その場で治療ができないことなどが欠点です。血液検査で測定する腫瘍マーカーは、進行がんでは値が上昇することもありますが正常値のままのこともあります。一般的には進行がんの治療後に再発の兆候がないか調べる際に用いますが、大腸ポリープや大腸がんの早期発見には役立ちません。
早期発見・早期治療
日本における大腸がんによる死亡者数は肺がんに次いで2番目に多く、特に、女性のがんによる死亡者数は、がん種別では大腸がんが最も多いことが報告されています。また、40歳を超えると大腸がんの発症リスクが高まりますが、多くの場合は自覚症状が現れないため、注意が必要です。大腸ポリープから進行大腸がんになるまでには年単位で何年もかけてゆっくりと増大していくという特徴があるため、早期に発見さえできれば大腸カメラで内視鏡切除手術が可能です。しかし、病状が進行すると最悪の場合は命に関わる事態にもつながりかねません。
海外と比べ、日本人によくみられる特徴として、大腸がん検診(便潜血検査)を受け、陽性の結果が出ても、二次精査として大腸カメラ検査を受ける方の割合が極端に少ないというデータがあります。実際にそういった方に大腸カメラ検査を受けない理由を尋ねますと、「痔のせいだと思うから自分は大腸がんではないと思う」、「検査は怖い、つらいから嫌だ」とおっしゃられる方が非常に多いです。実際、痔が原因のことも非常に多いですが、いずれも頻度が非常に高い痔という病気と大腸ポリープや大腸がんという病気が同時に存在していることもまた非常に多く経験されます。大腸カメラ検査の心理的・身体的負担については、鎮静剤を用いるなどの工夫で不安や苦痛に配慮した大腸カメラ検査を行うことによって解決することは可能です。
したがって、大腸ポリープや大腸がんの早期発見・早期治療のよい機会を失わないためにも、便潜血検査が陽性の方には、ぜひ大腸カメラ検査をお勧めしたいと思います。
便潜血検査が陽性でも大腸カメラ検査を受けたら腸に異常がない方も多いです。大腸ポリープや大腸がんがないことを確認することも大切なことだと私は思います。